プロ向けの撮影機材は何が違うのか


失敗しないためのモニタリング機能がプロ機にはある

ビデオカメラには、一般向け(コンシューマ機、民生機)と業務用(所謂プロ向け)が存在する。

プロ向けは一体何が違うのかというと、撮影を失敗しないための機能がたくさんあることである。
撮影には失敗する要素がたくさんある。
・画の水平が取れてない(傾いてしまっている、中央がズレているなど)
・音声が適切なレベルで撮れていない(小さい、または音割れ)
・ピントがあってない
・明るすぎる(白飛び)
・メディアが切れる(交換中に撮影できていない)
などなど。

こういったことを、単に液晶画面表示を観たり、耳から入る音を聞いて、職人のように勘でレベル調整しているわけではない。(神のような職人はやっているのだろうけれど)
撮影中に、こういったエラーが起きないようにモニターし、警告を出す機能がプロ機には用意されているのである。

一般の方に良く勘違いされがちなのが、「プロ向けのほうが撮影する能力そのもの(画質、発色)が良いだけ。一般機の画質に満足しているから、私に高い機材は不要」という理論である。
もちろん、画質の良さは違いの一つである。
プロ向けのほうが、一般機よりもより大きな解像度で撮影できたり、暗所でも難なく発色良く撮れるものが多い。
しかしそれよりも、「撮影する」という行為を補助的にサポートし、「失敗しないためのモニタリング機能の充実」がプロ機に必須の機能であり、一般機と業務用の大きな違いである。

つまり、一般機のほうがむしろ、カメラマンの職人的感覚に依存する、「撮影失敗しやすいカメラ」である。

こういった撮影中のサポート機能というのは、撮影しているカメラマンにしかわからないもので、当然ながら映像には記録されないし、完成した映像作品を観てもわからない。
だから普通の人はわからない世界だ。

なので、今回は撮影アシスト機能をいくつか紹介する。
こうやってプロ機では撮影しているという紹介および、プロ機が必要な理由がわからない方の一助になれば幸いである。

その1:構図アシスト

水平をばっちり取って撮影するにしろ、敢えて水平を外してダイナミックに撮るにしろ、基準となる水平のラインは必要な要素である。
また、画面を三分割にするとか「お決まりの構図理論」というのがあって、それにも基準の線が必要である。

さらには、動画の世界ではセーフゾーンとなる、テレビで写した場合にはみ出さないエリアを意識する必要がある。
実は、カメラで撮った画が端まですべてきっちりと表示されるわけではない。テレビの方式や機種により、端の数%ははみ出てしまい、表示されない。セーフゾーン内に収まった画は確実に表示される。
セーフゾーン:http://polyne.net/2852#2-3

こういった基準となる線や、セーフゾーンの境界線が、撮影中の映像に重ねてファインダーに表示されている。
「電子水準器」も搭載されており、カメラが水平か否かはファインダーを覗きながら見えている。
水平ぴったりに撮ったり、敢えてずらしたりしているのである。
https://www.sony.jp/products/Professional/c_c/hdv/products/images/v1j/feature03_img_08.gif

なんとなく水平に構えて、勘で構図を決めているわけではない。

その2:音声レベルモニター、二系統録音

音は非常に重要な要素であるため、これを失敗してはならない。
撮影中は、録音されている音の音量がモニターに表示されている。
http://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7/feature_4.html

オーディオ機器でもよくあるようなレベルモニターで、緑は適正範囲、黄色は危険、赤は音割れである。
このレベルモニターを見ながら、小さすぎたら録音レベルを上げ、大きすぎたら下げている。

また、中~大型のカメラは音声録音端子を二系統持っており、2つのマイクで録音ができる。
1つは小さめ、2つは大きめに録音することも可能で、突然予期せずに小さすぎる・大きすぎる音が入っても、いずれかのマイクで確実に録音するのである。

耳と予想を頼りに録音しているわけではない。
(とはいえ、耳にも頼れるようにイヤフォン端子を備えでしっかりモニターできる機能もある)

その3:フォーカスピーキング

一眼ムービーも普及し、背景をぼかして被写体だけにピントが合うような幻想的な映像が増えてきた。
良くボケるカメラで特に陥るミスが、ピントが合っていないことである。

これも、プロ機では「フォーカスピーキング」機能がある。
撮影中、ピントが合っている部分の線が強調されて「ここにピントが合っているよ」とわかりやすくなっているのである。
http://c-camera.com/camera/page677.html

また、モノクロ映像のほうがよりわかりやすいので、フォーカスピーキング中は白黒表示されるモニターや、常時白黒のファインダーになっているカメラも数多く存在する。

なんとなくフォーカスがあってそうだなと思って撮っているわけではない。

その4:ゼブラ表示

太陽光がさんさんと当たる環境だとか、照明のきつい室内であると、白飛びがおきてしまうことがあり、これは明るすぎて真っ白になり、映像中の一部または全部が何も映っていない状態である。

これを抑えるためには露出を絞って光の量を抑えるわけだが、これをサポートする「ゼブラ表示」があり、白飛びしている部分を斜線(ゼブラ)で強調して警告してくれるのである。
http://www.sony.jp/products/picture/fdr-ax1_006.jpg

ゼブラが出たら、消えるまで絞って露出を抑える。(もしくは意図的に白飛びのまま残す)

「今日は天気いいなー、絞っとくか」と思って撮っているわけではない。

その5:リレー記録

これは、SDカードなどのテープレス撮影で一般化してきた機能。
テープの時代は、「テープチェンジ」が必要で、テープが切れたら次のテープに交換するまで撮影を中断する必要があった。

SDカードなどでメモリー記録になった今、メディアが小さいため、複数枚をカメラにさせるようになった。
このため、メディアを2枚刺しておいて、1枚のメディアがいっぱいになったら、2枚目に記録が移り、その間に1枚目のメディアを交換するということができるようになった。
メディアがいっぱいになったことによる撮影の中断がなくなったのである。

失敗しないために

業務で請け負った1度きりの撮影を失敗しないための機能がプロ機にはたくさんついている。

プロでなくとも、映像作品を撮るような機会がある方は、画質だけで「一般機でもいいや」と決めつけず、こういったサポート機能がどこまで必要なのか、それを考えてカメラ選びをしてみると良いと思う。

(正直、子供の運動会や発表会、自分や知人の結婚式なんかでも絶対に失敗したくないので、レンタルでもよいから業務機の使用をお勧めしたいと思っている)

Canon EOS向けファームウェアMagicLantern

なお、Canonの一眼レフを使って動画撮影をしている方々に朗報。
MagicLanternという「なんと無料の」外部ファームウェアがあり、これを導入することによって、構図アシスト線、音声モニター、フォーカスピーキング、ゼブラ、モノクロ表示といった上記機能などなどが追加される。
本体に改造を加えない仕様であるため、元に戻すことも簡単にできる。
もちろん自己責任の範囲であるが、かなり安心してチャレンジできるタイプのファームウェアであるので、ぜひ取り入れてほしいと思う。
http://www.magiclantern.fm/

MagicLanternのLiveView機能およびサポートされているカメラ機種(MagicLanternノWebページからキャプチャ)

MagicLanternのLiveView機能およびサポートされているカメラ機種(MagicLanternノWebページからキャプチャ)

 

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映像作家コジロウ
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