インディーズバンドがメジャーデビューした時の話


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2008年ごろだったか。
インディーズバンドのMVを何人かで撮った。

バンドメンバーはメジャーデビュー前の未熟。
私たち制作側も未熟モンの集まり。
それが前提でやるプロジェクトだった。

未熟同士、いろいろと話をしながらアイデアを互いに出し合って制作した。

 

楽しかった。
『未熟者同士が作ったMV』みたいなニュアンスを含むプロジェクトのタイトルを冠して、制作したMVはYoutubeで公開されて…..いた。

 

数年後、バンドは売れ、メジャーデビューすることになった。

レーベル会社の事務員だろうか。
冷たいメールがきた。

『あなたの公開しているビデオを削除してください。応じない場合、法に基づく手段を取ります。』

ビビったよ。
あんなに楽しく作り上げ、メジャーデビューに至るための材料のほんの少しの要因として利用されたMV。
言っていることは分かるけど、『そんな言い方ある?』みたいな。

きっと、無断でライブなんかを撮ってアップしていた人も多かったから、それと一緒にして定形で送ったんだろうね。

頭に来て、Youtubeに加え、撮って保存してあった元ファイルごと全部消した。

 

それから数ヶ月後。
メンバーから謝罪が来た。
『一緒にやった皆さんに、失礼なメールをしてしまった。正直、メジャーデビューするので削除は不可避なのだけれど、言い方がなってなかった。これからも応援してほしい』的な内容であった。

もう全部削除した後だったけれど、やはりメンバーはまともで、ロクなレーベル会社では無かったのかもしれない。

 

今や、テレビCMや店舗BGMで彼らの曲を聴くようになった。
当時の記録は磁気の渦へと消えていき、見返すことはできない。

それでも、制作中に浮かんだアイデアをやり取りしながら、ああでもないこうでもないと作った日々は今も懐かしい。
ちょっとしたワンフレーズを歌うボーカルの声がめちゃくちゃ良くて鳥肌がたったり、ベースはイケメンのくせに生活グチャグチャで適当だったり。

 

メジャーデビューするってことは、そういうインディーズ期間の未熟でバタバタした日々を置いていくって言う側面もバンドによってはあるのだろう。

 

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映像作家コジロウ
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