趣旨
1.コンサルティングというのは、クライアントが辿り着きたいゴールに対して、近道を提供する仕事。
2.胡散臭い情報詳細の転売や、「誰でもできる簡単ノウハウ」を売るのはコンサルまがいである。
3.人に何か商売するなら、誰しもコンサルティングをしている
近道ってなんやねん
私の本職は、現在ITコンサルタントである。
コンサルタントとは、クライアントが辿り着きたいゴールへの近道を提供する仕事。
ゴールとは、「売り上げを伸ばす」「新商品を売る」「経営改善したい」「新しい社屋に無事移転する」「古いシステムを入れ替えたい」「安定して良い社員に入って欲しい」なお、会社によって様々である。
その種類も粒度も様々であり、「安定して経営する」という永遠に続くようなテーマ(ある意味ゴールはこない)から、「今、このオフィスから無駄な紙資料をなくす」というような短期集中のゴールまである。
こういった様々な種類/粒度のゴールに対し、最適な進め方を考え、事例を紹介し、共に進めていくのがコンサルタントであって、種類別にいるから星の数ほどいる。
経営課題に対応する経営コンサルタント、IT関連の課題に対応するITコンサルタント、人事問題に対応する人事コンサルタントなどなど。
形の見えない商品を売っている怪しげな職業と捉えられがちだが、多くのコンサルタントは元経営者、元SE、元会計士、元人事部など、専門を裏付けるバックグラウンドを持ち、その経験に基づいた指南内容や業務のカスタマイズをして「近道」を提供している。
コンサルタントがいなければ、会社が抱える問題をクライアントが自らの少ない経験に基づき解決することになる。
・新しい分野の商品を売り出す
・システムが専門の会社ではないのに、何億円もするシステムを買う
・社内で何度も改善活動をしてきたけれど、一向に良くならない
こういう場面が会社には発生するし、自分たちだけで進めていくのは不安がつきまとう。
一から自分たちで情報を集め、選別して判断し、進めるというのも、かなり非効率である。
そういうときに専門のコンサルタントがいれば、会社に変わって情報を集め、他社と交渉し、会社のレベルに合わせて情報を加工して提供する。
その会社にとって良いものか悪いものか、わかりやすく判断しやすい形にまとめ直して提供をする。
これが問題に対する近道のアプローチである。
なんでコンサルタントの仕事は見えにくいのか
コンサルタントが売るものが定型的でなく、価値が計りづらく、目に見えないからだと思う。
「売り上げを改善したい」という問題でも、A社とB社では解決策は異なる。
同じA社の中でも、今年と来年では、解決策は異なる。
だから、コンサルタントが提供するものは、定型化しない。
実績やアビリティの列挙はできるが、一緒にやって何が提供できるかは、発注時点で未定であることも多い。
もちろん想定解を持って提案し、それに沿って進めていくが、やりながら形が変わったり、別の大きな課題に気づいたら、そちらの解決に差し代わったりもする。
あくまでも手段は決めずに取り掛かる。
「クライアントのゴール達成」が目的であり、それが達成されるのであれば、何が提供されるかはあまり意味はない。
だからこそ、国、政府、自治体から大企業、中小企業、個人相手まで問わず、様々な機関に対してコンサルタントが存在できる。
この、形がなく定形化されておらず、最後までなかなか効果が分からないというイメージが変に伝わり、「騙される」「手抜き」「無意味で外野的」「何も生み出さない」など揶揄されやすい。
しかし実際は、この特性は楽でもなんでもなく、コンサル業務最大の胃が痛くなるほど難しいところだ。
最後まで「何が提供できるか?」と頭を悩ませ、努力を重ねる。
ゴールに近づけた効果を生み出したかをいつも自分に問いかける。
出来上がった商品を宣伝し、それが欲しいと言ってきた客に商品を売る商売より、その点においては苦労する。
ITのコンサルティング
もう少し具体的にいうと。
私がやっているITコンサルティングで言えば、多いのは、会社や自治体のシステム調達のお手伝いである。
パソコンに疎い方は、新しいパソコンを家電店に買いに行く時、一人では不安だろう。
店員が言うことは理解できるだろうか、騙されないだろうか、安く買えるだろうか…
そういうとき、詳しい友人が着いてきてくれるだけで安心するのではないだろうか?
もしかすると親切な店員がいて、いい提案をし、親切な友人の出る幕はなく、パソコンが買えるかもしれない。
ITコンサルタントは、企業や自治体等が何億円もするシステム(高いパソコン)の買い物に付き合う友人みたいなものだ。
どんなパソコンが欲しいのか、いくらぐらいで欲しいのか、何を解決したいのかをよーく話し合う。
そこからシステムを買いに行き、高いシステムを売ってくれる会社(=家電屋の店員)とお話が始まる。
良い提案社だったら、コンサルの出る幕がないこともある。
「このシステム会社の製品は安心して選べますよ」と、(理由をちゃんと資料化して)背中を教えてあげるだけである。
しかし、世の中そう上手くはいかず、クライアントが迷ったり、予定と違う(高すぎるとか欲しい機能が存在しないとか)ことが起きたり、騙されかけたりすることが多い。
そういう時にも、クライアントに変わって、多くの会社と交渉したり、メリットデメリットのポイントをまとめたりして提案を行う。
逆に、ゴール達成に必要であれば、クライアントが折れるべきところ、課題をついたりもする。(要件を落とす、予算を拡大するなど)
そうやって、いいシステムのお買い物をするお手伝いをするのが、ITコンサルタントの多い業務である。
複数社のソフトカタログをドサっと並べ、「はい、選んでください」というような胡散臭い仕事ではない。
胡散臭いコンサルまがい
定型化して売りさばくようなノウハウというのは、コンサルティングにはならない。
情報商材をマニュアル化して転売し、「売上アップ!」「あなたも副業でウハウハ!」みたいな文句で、売り付けてお終い、みたいな自称コンサルタントは、まがい物である。
定型化できて、誰でもそれをやればゴールに到達できるノウハウというのはなかなかない。
しかし、転売は簡単でやりやすいため、この手の「自称コンサルタント」が氾濫してしまった。
ちゃんとしたコンサルタントが周りにいない方は、こういう自称コンサルタントがコンサルのイメージになってしまい、胡散臭くインチキな商売というイメージになってしまっているだろう。
非常に悲しい実情である。
人に何か商売するなら、誰しもコンサルティングをしている
ここまで読んで、商売をしている人なら「え?」と思ったことがあるかもしれない。
「買う人のためになるよう、相談に乗り、一番良いものを勧める。」
これはコンサルタントではなくても、商売をやるならきっとみんながやっていることなのだ。
商売に限らないかもしれない。
誰かの相談に乗ったり、会合の幹事をやるときにも発揮することだろう。
そう、「近道の提供」はコンサルだけがやっているわけではない。
インチキをせず、本気で相手のために何かを提供したいと思ったら、みんなが少しづつやることなのだ。
コンサルタントというのは、それを専門の業務にしたものである。
わけのわからん商売ではなくて、「近道を提供する」影武者のような動きを専門化した職業である。
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映像作家コジロウ
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